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100mの道筋

測る。弱いところが分かる。今週やることが決まる。
陸上の経験がなくても、これだけで練習を組めるようにする地図です。

01

100mは、4つに分けて考える

記録にいちばん強く関わるのは最高スピードです。日本陸連の分析では、自己ベストと最高スピードの相関が男子でr=-0.976、女子でr=-0.988と報告されています[1]。ただ、最高スピードに達するまでの加速も、その後の落ち方も、タイムに入ります。

一次加速二次加速トップスピード維持 0m50m100m
縦がスピード、横が距離の概念図です。上の地図も含め、区切りの距離は目安で、人によって動きます。最高スピードに達する地点は40〜80mとばらつくと報告されています[1]。

一次加速

0–10m

測る=止まった姿勢からの10m

いる力=地面を後ろへ押す力

練習=短い全力走、坂、そり

二次加速

10–30m

測る=10mから30mまで

いる力=加速を切らさず、姿勢を起こしていく流れ

練習=30〜50mの全力走

トップスピード

30–80m

測る=助走付きの10m

いる力=短い接地で強く弾む脚

練習=助走付きの全力走、跳躍

維持

80–100m

測る=80mから100mまで

いる力=終盤も脚の硬さとピッチを保つ力

練習=80〜100mの全力走

土台はどの局面にも共通で、筋力と跳躍、ケガの予防です。局面の分け方はレビュー論文[2]によります。

各メニューには、根拠の強さを付けています。論文あり 研究で確かめられたもの。現場の定説 一流の指導現場で広く使われるもの。実験中 上の2つから組み立てた案で、効果はまだ確かめていないもの。

02

10秒台と12秒台に、どれだけのスピードがいるか

男子の10秒台は最高スピード毎秒10.3m前後から、女子の12秒台は毎秒8.5m前後からが、ひとつの目安です。

100mの記録最高スピード助走付き10mに直すと30mの通過元の値
男子11秒0010.30m/s0.97秒4.16秒式から計算
10秒80〜10秒9910.68m/s0.94秒4.11秒2人の平均
10秒60〜10秒7910.76m/s0.93秒4.06秒12人の平均
女子13秒008.51m/s1.18秒4.70秒式から計算
12秒508.99m/s1.11秒4.55秒式から計算
12秒00〜12秒199.39m/s1.07秒4.43秒10人の平均

出典=日本陸連の報告の表6と図3(Y=記録、X=最高スピードか30mの通過)[1]。女子の式は Y=-1.047X+21.91、30mの通過は男子 Y=2.991X-1.45、女子 Y=3.415X-3.04 です。男子11秒00の最高スピードは別の報告の式 Y=-0.7378X+18.60 から計算しました[3]。30mの欄は、どの行も式から計算した値です。助走付き10mの欄は、最高スピードから割り算した値です。主に競技者の、レース中の測定で、30mの通過にはスタートの反応も入ります。

10秒台の入口の値は、データが薄い範囲です。男子の10秒80〜10秒99は2人だけなので、幅を持って見てください。

どれくらいの人が届いているか

2026年
11月4日時点
人数登録者に
対する割合
男子 10秒台1,788人約0.6〜0.7%
女子 11秒台148人約0.1%
女子 12秒台まで1,523人約0.9〜1.2%

男子10秒台と同じ割合になる女子のタイムは、試算で12秒5〜12秒8です。このサイトで女子の目標を12秒台にしているのは、そのためです。

人数は世界陸連の日本人リストの公認記録を数えた値で、掲載のない大会は入りません[7]。登録会員416,673人[8]の男女別が見つからないため、男子を6〜7割と仮定しました。高校の陸上部員の男女比(男子約69%)[9]が根拠です。分母には短距離以外の選手も入ります。

03

測って、今の位置を知る

20mの助走を付けて走り、その先の10mのタイムを測ります。スマホのスロー撮影(240コマ/秒)で、10mの両端のコーンを胴体が通った瞬間を数えます。10mは1秒前後なので、手押しのストップウォッチの0.1秒のズレは、スピードの約1割にあたります。真横の離れた位置から撮ると、ズレが減ります。

入力した数字は、この端末の中で計算するだけで、どこにも送りません。計算は上の表と同じ元データで、競技者の傾向から見た目安です。未来の記録を保証するものではありません。

月に1回測るものこれが弱ければ
止まった姿勢からの10m一次加速を増やす
30mのタイム二次加速を増やす
助走付きの10mトップスピードを増やす
立ち幅跳び、3段跳び筋力と跳躍を増やす 実験中

30mと助走付き10mの目安は、基準値の表にあります。止まった姿勢からの10mは、信頼できる基準値をまだ確認できていないので、自分の前回の記録と比べてください。

04

週の組み方

守るルールは3つです。

1. 全力走の日は、間を48時間あける。 現場の定説 一流の現場でも、連日の全力走はほとんど行われていません[2]。
2. 筋トレは全力走の翌日に置く。 現場の定説 筋肉痛のまま全力で走らないためで、多くの指導者がこの順です[2]。
3. タイムが落ちたら、その日の全力走は終わる。 現場の定説 量より、1本ごとの質を優先します[2]。

曜日週2日週3日週4日
月休み加速加速
火加速+筋トレ筋トレ・跳躍筋トレ・跳躍
水休みトップスピード休み
木休み休みトップスピード
金トップスピード+跳躍維持筋トレ・跳躍
土休み休み休み
日休み休み休み

実験中 この表は、下の一流選手の週を、練習できる日数に合わせて縮めた案です。市民や学生の週の組み方を直接比べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

全力走の1回の例(これから始める人)

日内容休み
加速低い姿勢から20m × 5〜8本2分
トップスピード20m助走+10m全力 × 4〜5本約4分
維持100m × 2〜3本10分

距離と休みは、レビュー論文の初心者向けの例です[2]。加速とトップスピードの本数は、下の表の総量に収まるように付けた案です。全力走の前には十分に体を温めてください。

参考:論文に載っている一流選手の週

曜日準備期の前半準備期の後半試合期
月坂ダッシュ加速加速+最高スピード
火筋肥大の筋トレ爆発的筋トレ+跳躍跳躍
水軽い流し軽い流し軽い流し
木長めの速い走り最高スピード維持
金筋肥大の筋トレ爆発的筋トレ+跳躍跳躍
土軽い流し軽い流し軽い流し
日休み休み休み

Haugenらの表を訳しました[2]。

06

1年の流れ

現場の定説 短い距離から長い距離へ広げる考え方が、よく使われます[2]。まず短い加速と筋力、次に最高スピード、試合が近づいたら維持という順です。

ただ、どの周期の組み方が優れているかを直接比べた証拠はない、と同じ論文が書いています[2]。1つに決めて月1回測り、伸びなければ変えるのが現実的です。

07

ケガと成長期

ハムストリングス。 論文あり ノルディックハムストリングを含む予防プログラムで、肉離れの発生率がほぼ半分になったという分析があります(リスク比0.49)[5]。競技者の肉離れの3分の2は、準備期から試合期に切り替わる時期に起きたという報告があるので[2]、この時期は量と強さを急に上げないようにします。

痛みがある時は、全力走をしません。 痛みが続く時は、医療機関に相談してください。

成長期。 論文あり 男子の分析では、身長が急に伸びる時期の最中と後の選手で、全力走の練習の効果が大きく出ました[6]。それより前の時期は、研究の結果が割れています。同じ年齢でも体の発達は違うので、学年でそろえず、一人ずつ見てください。女子のデータは、ここでは確かめられていません。

08

このサイトの出発点

「男性は10秒台、女性は12秒台を、誰でも出せる」。これは運営者の矢上真吾の持論で、証明されたものではありません。短距離の能力は遺伝の影響が大きいとするレビューもあります[2]。それでも、パワー、技術、スピードの維持は鍛えられると同じ論文が書いています。だから、誰でも使える道筋を先に作り、確かめながら直していきます。

09

根拠

  1. 松尾彰文ほか(2014)男女100mレースにおける記録と、スピード、ピッチおよびストライドの関係について.陸上競技研究紀要 10, 64-74.PDF
  2. Haugen T, Seiler S, Sandbakk Ø, Tønnessen E. (2019) The Training and Development of Elite Sprint Performance. Sports Medicine - Open. doi:10.1186/s40798-019-0221-0
  3. 日本陸上競技連盟(記録と数字で楽しむ第110回日本選手権)9秒95の日本新をデータから分析.記事
  4. Myrvang S, van den Tillaar R. (2024) The Longitudinal Effects of Resisted and Assisted Sprint Training. Sports Medicine - Open. doi:10.1186/s40798-024-00777-7
  5. Including the Nordic hamstring exercise in injury prevention programmes halves the rate of hamstring injuries (2019). British Journal of Sports Medicine 53(21). BJSM
  6. Variation in responses to sprint training in male youth athletes: A meta-analysis (2017). 書誌情報
  7. World Athletics.Toplists 100m(Japan, 2026).男子/女子
  8. 日本陸上競技連盟.概要(登録会員数・2026年3月31日現在)
  9. 全国高等学校体育連盟.令和7年度 加盟・登録状況